ブラジルの大統領ミシェル・テメルの抑えておきたい5つのポイント

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今年はブラジル大統領選挙の年ですね。

当初は前大統領ジルマ・ルセフの罷免手続きが正式に終わり、8月末に就任したミシェル・テメル。評判は人それぞれですが、時期大統領選挙には出馬しない方向のようです。

リオオリンピックから東京オリンピックへの連携や日本からの原発輸出を引き出すなど、経済全般についての協力を求めての来日実績もあるミシェル・テメル大統領。

日本人からするとブラジルの大統領なんて誰やねんといったところだと思いますが、ブラジルは既に人口2億人を超える世界第5位の大国でして、GDPについても2050年には日本を抜いて世界第5位にまで上昇するとされています。

細かいことを追うのも大変ですので、さっくりブラジル大統領を知る上で知っておきたい5つのポイントをご紹介します。

  

ミシェル・テメル(Michel Temer)の基本的なプロフィール

人となりを知る前にまず簡単なプロフィールをご紹介します。

1940年9月23日にサンパウロ市内の中心に位置するティエテに生まれたテメルは現在76歳です。元々は弁護士や大学教授を経て議員に。

議員としては下院議員に6記連続当選、また3度に渡る下院議長も務めていて、超ベテラン議員ですね。2016年5月12日にジルマ・ルセフ前大統領が停職処分に追い込まれて、副大統領であたテメル氏が大統領代行に就任、そして8月末の正式な罷免手続きを経てブラジル大統領になりました。

2018年末までが大統領としての当面の任期で、約2年間政権運営を担うことになります。

さて、そんなミシェル氏。実は野次馬として中々興味深いのネタを多く持っておりまして、いくつかの小話を抑えておくと新ブラジル大統領のぼんやりとした姿が見えてきます。

ミシェル・テメルを知るためのポイント5つ

①前大統領罷免の首謀者。マッチポンプな彼の愛称は「消防士」

前大統領の罷免に追い込んだ中心人物が実はこのテメル大統領。政権を共に担い、大統領を助ける身内であるはずの副大統領が糾弾したというから、さぁ大変だといった状況でした。

自分のボスを後ろから刺したようなもので、停職処分、そして正式な罷免手続きが行われてもなお、国民からはクーデターだという批判的な声は少なくありませんでした。

自分で火種を撒いて大騒ぎした末に就任後にした挨拶では「各集団ではなく、国の利益を重視しよう」と事態の沈静化を図るかのような言動をしたことも国民からの批判の的となりました。

このように事態を自ら悪化させながら、自分で問題を解決して、あたかも自分の功績かのようにすることを俗に「マッチポンプ」と言います。マッチで火をつけて、ポンプで火消しをするというわけです。

そして皮肉なのが彼のあだながボンベイロ(消防士)だということ。もちろん今回の件からではなく、これまで対話により諸問題を解決させてきた実績があるため。また広い人脈を利用して、自らに都合の良いストーリー作りが得意と言われており、生粋の政治家とも言えます。

②まだスキャンダルはないけど、多くのブラジル人が彼も同類だと思っている

実際まだブラジルでは収賄が当たり前のようにまかり通っています。

今回糾弾されたジルマ・ルセフ前大統領も国営会社との間で関連企業に与するような取引をさせたとわれているのですが、周りのブラジル人の友人に聞いても「何かしら収賄めいたことをしているのは皆が知ってた。”より悪い”か”最悪”かが問題だ」という始末。

つまりルセフ前大統領を支持する人からすれば「ルセフ=より悪い」「テメル=最悪」といったところで、テメルも当然のごとく何かしらの違法行為に手を染めていると考えています。

これが大袈裟だと思うかもしれませんが、ブラジル人が良く言うジョークに「ブラジルで最も質の悪いマフィアは政府だ」というようなものがあります。腐敗しているのは周知の事実で、その中でも貧困層に対して社会的な投資を続けてきたルセフを支持する人は少なくないのです。

③両親はレバノンからの移民。故郷では今も人気者

テメル大統領の両親は1925年にレバノンから移民で来伯しており、テメルはレバノン系2世。政府統計によればブラジルには700万人から1,000万人のレバノン系ブラジル人がいるらしいです。

第一次世界大戦の難から逃れてブラジルへやってきたらしく、決して豊かな出自ではないのだと思いますが、そこからたった1代で大統領にまで上り詰めたわけですから、その政治手腕は良くも悪くも相当なものでしょう。8人兄弟の末っ子とのことで、兄弟から学ぶことも少なくなかったかも知れません。

ちなみに親の故郷であるレバノンの小さな町Btaabouraには多くのテメルファンがいるとかいないとか。

④43歳年下の奥さんは元準ミス・サンパウロ。首には夫のタトゥー

43歳差だそうです。あな恐ろしや。おじさんが50歳の時に奥さんは7歳だったという年齢差。

奥さんが20歳の時にパーティーで知り合ったそうです。高齢者の仲間入り直前の63歳が女子大生と連絡先を交換するという日本であればこれこそ週刊誌に叩かれそうなネタです。

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とはいえ、テメル大統領が惚れ込むのも無理はなく、奥さんマルセラ・テメルは19歳の時にミス・サンパウロ準ミスに輝いた後にモデルとして活躍した経歴の持ち主。

そんな奥さんは首にテメル大統領の名前を彫っているということ。ブラジルではタトゥーが一般的で、むしろタトゥーがない人の方が珍しいくらいです。社会からは好奇の目にさらされることも多いでしょうから、夫への愛を見せているといったところですかね。

ちなみにマルセラさんはミシェル・テメル大統領にとっては3番目の奥さんです。悪しからず。

⑤ウォール街からは人気者

どうしても批判的な話の方が多くなりがちでして、こちらも同類のネタです。

前述の通り、社会保険などの政策には好評だったルセフ大統領ですが、ブラジルの景気は直近どん底でした。インフレは続く一方で、国内経済は失速、GDP成長率もついにマイナスに転じてしまい、多くの日系企業も人員のカットや撤退を余儀なくされています。

テメル大統領はブラジル民主運動党の党首でもありまして、昨年副大統領時代に独自の経済成長政策を提示していました。これがウォール街、つまりはアメリカ金融街から好評だったようで、今年の大きな政治混乱の中においても、いやそれどころか糾弾騒動が始まってから株式市場は上昇トレンドを続けてきました。

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直近においても国営企業の民営化や日本を始めとした各国との経済連携強化を進めており、ブラジル人からは早期の大統領選挙をという声がある一方で、ウォール街からは人気があると皮肉る海外メディアがあったりします。

全体的に評判の悪いテメル大統領。改善の兆しを経済成長につなげられるのか

大統領就任までの方法がいくら憲法に則ったものであったとはいえ、やはり心象は難しいものがあるのでしょう。

まだスタート地点に立ったばかりで、ここから悪評を払拭できるだけの結果を出せるかどうかが問われるわけです。

しかし、先日の統一地方選挙でもブラジル民主連盟が躍進して、経済状況についても投資銀行アナリストの友人によれば「来年は今年よりも良くなる」ということでいくらかの追い風が吹いているようです。この風に上手く乗れないとこの風評が止むことはなさそうです。

※ブラジル関連の経済・ビジネス・文化を学ぶたい方にはこちらの本がオススメです。

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