先日サンパウロ市内にあるデスパシャンチ(despachante)へ行きまして、ブラジルにおける就労ビザ取得に必要な書類や雇用内容について確認をしてきました。
デスパシャンチとは、手続代行業者のことで、ビザ関連の手続きはもちろん、通関手続きから車両購入からありとあらゆる行政手続きを代行してくれる業者のことです。もちろん自分自身で手続きを行うことはできるのですが、非常に不安定なブラジルにおける行政手続きのため、個人で行うよりも業者に任せた方が安全・確実・早いというわけです。
ブラジルで働いてみたいという方も少なからずいると思います。一方で、ブラジルにおける就労ビザの取得は超難関という声もあらゆるところで聞きます。僕も現地で就職活動をしている中で、就労ビザは取得が難しいという話は百万回は聞いたと思うのですが、誰も「何故、何が難しいのか」正確に理解している人はおらず、デスパシャンチに行って初めてその内容を知ることができました。
【2017年2月:追記】
最近、学生ビザを就労ビザに切り替えることのできるようになったようです。但し就労先との雇用契約書が必要になるなどの要件があります。詳しくは留学先の大学や語学学校へお問い合わせ下さい。
ブラジル就労ビザ再考
就労ビザという制度が必要である理由
ずっと日本で働いていると就労ビザとは無縁ですから、就労ビザの意義について考えることはないでしょう。また日本における外国人の就労ビザと聞くと、母国より高い収入を求めて流入する不法就労者の乱入を防ぎ、治安を守るという目的を想像します。
ブラジルもまた南米においては発展した国であり、一部にはこうした目的もあるのだと思いますが、それ以上に重要なのはブラジル人の雇用を守るということです。
まだまだ発展途上の国で、貧富の差も大きいため、外国人労働者が増加することはブラジルの発展以前に、国民の生活を脅かすことにつながります。
このブラジル人の雇用保守という概念が非常に重要でして、就労ビザ取得においては常にこの原則を想定する必要があります。
ブラジルで就労ビザの対象となる人
管理職以上または日本に精通している必要
ブラジル人の雇用を守るためには、原則としてブラジル人ができる仕事の人間はいらないということです。ブラジル人ができる仕事であれば、失業しているブラジル人は多数存在するわけで、そちらを優先的に雇用すればいいわけです。
ここから導かれる一つ目の結論は、単純労働はもちろん、一般社員クラスの外国人労働者が必要となることはほとんどないということです。
もしくは日本人にしかできない仕事、例えば日本語教師などであれば、合理的な説明がつきます。
該当業務における3年以上の就業経験
また外国人の労働力が必要な場合、当該労働者が本当にその理由に合致しているかということが重要です。これは後述する「職務経歴書の提出」が要件となっている理由であるわけですが、要は今まで日本で何かしらの経験をしていて、その経験に基づいたブロフェッショナルな仕事をブラジルですることが前提となります。
もし「私はブラジルで日本語を教えられる」と言っても、ブラジルでその仕事をするのであれば、日本でそのような職務に最低でも3年以上(目安)就いていたことが必要となります。ボランティアではダメです。
つまり、そのような明白なスキルが無ければブラジルで就労ビザを得て働くことは不可能と考えるべきでしょう。
一定の給与水準
そして最後に上記の要件につながる話なのですが、ブラジル人ができなくて、一定のプロフェッショナルな技術が必要な仕事であれば、一定の給与水準が出るのが当たり前ということです。
例えばブラジルの最低賃金は月800レアル(約25,000円)程度でして、ウェイターやキッチン調理などは1,500レアルもあれば良い方です。また3,000~5,000(約16万円)レアルあれば十分中流階級に属されます。
これも飽くまで目安ですが、デスパシャンチの話では、1万レアル(30万円)程度はあった方がいいということでした。日本であれば通常の水準ですが、こちらではマネージャークラスでもここまでの給料はもらえません。
もし現地採用で就労ビザの獲得を目指すとすれば、この給与水準の仕事で契約する必要があるということです。しかも企業にとってはこの給与額と同額近い税金や社会保険料等の負担があり、英語もポル語も得意でない人間がこの給与水準を現地企業からもらうというのはほぼ不可能と考えて差し支えないでしょう。
ほとんどが駐在。その他は投資ビザか永住ビザ、または不法就労
この水準をクリアできるのは基本的に駐在員くらいでしょう。しかも一定の年齢に達した人だけです。若くて30代といったところです。
もちろんその他にも現地で働いている人々はいるのですが、その他のビザで働いているか、もしくは不法就労です。(この不法就労が日本人でも結構います)
簡単に紹介すると以下のような永住ビザがあります。
永住ビザ① | 労働ビザで2年以上滞在の後、更新時に永住ビザに切り替えが可能 |
永住ビザ② | ブラジル人と結婚することで、永住ビザの取得が可能 |
永住ビザ③ | ブラジル国内で子供を出産すれば永住ビザの取得が可能。(外国人同士の子供でも可) |
永住ビザ④ (投資ビザ) |
個人でも一定の投資額の要件を満たせば投資ビザが取得可能。目安は2016年現在15万レアル(約480万円) |
永住ビザ①のパターンでは駐在員がそのままブラジルに残るケースが相応にあります。また②の日本人も少なくなく、③は中国人で多いパターンだと聞きます。また④のように一定のお金をブラジル国内に入れれば永住ビザを取得することが可能です。
ブラジル就労ビザ取得手続き
さて、もし無事にあなたを採用してくれる企業が見つかったとしたら、そのあとの手続き自体は難しくありません。ただ、若干面倒ですので、予め確認しておくことをオススメします。
就労ビザに係る必要書類
デスパシャンチに提出する資料は以下の通りです。
大学卒業証明
大学の卒業証明です。英語版で問題ありません。
大学から受け取った後に日本の大使館で確認印を受ける必要があります。
職務経歴書
日本で働いていた時の職務経歴書です。
プロジェクト単位でいつ、どのような仕事に従事していたかを詳細に記載します。
なお、履歴書ではなく、自分がブラジルで関わる職務に関連して、日本のどの会社で、何をしていたかを記載したものになります。さらに、当該企業の社印も必要になりますので、くれぐれんもご注意下さい。
こちらも日本の大使館で内容証明の印鑑が必要です。
登記謄本(Contrato Civil)
企業の登記謄本です。僕も実物を見ていないのですが、契約企業の謄本が必要であると言われました。
その他に必要なもの
その他にパスポートやら無犯罪証明書など細かな書類が必要ですが、ここらへんはデスパシャンチに聞いて下さい。なお、僕が訪ねたところでは、手続代行費用3,000レアル(約96,000円)とのことでした。まぁ高くもなく、安くもなくといった感じですかね。
駐在でもなく、結婚でもなく、ブラジルで働く難しさ
もちろん不法労働者は多くいます。この国では不法なことだらけで、不法だからといって何か困るということはほとんどありません。また日系コミュニティの中で小間使い的な稼ぎ方をしている人も少なからずいます。
そんな中で就労ビザを発給してくれる可能性を探していると、「現実的ではない」という声を多く聞きます。何がネックなのかと常々考えていたのですが、結局「企業が負担するコスト」が最終的な答えでしょう。
手続きは最近なら2ヶ月程度で完結するそうですし、業者に代行してもらえれば費用も手間もほとんどかかりません。
問題となるのは、一定の職能レベルとそれに付随する高い給与水準、さらにはそこにまとわりつく高い各種労働債務。ここが最大のネックになっているのだと思います。
もしブラジルで働きたいという方は、ここらへんの問題に対する明確な回答を準備する必要がありそうです。
参考 JETRO
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