テレビ東京系列で放送され、多くのファンを持つドラマ「孤独のグルメ」。深夜、小腹が空いた時間に、主人公・井之頭五郎が黙々と美味しそうに食事をする姿に、思わずお腹を鳴らした方も多いのではないでしょうか。派手な演出はないものの、食事そのものの魅力と、食べる喜びがひしひしと伝わってくる名作ドラマです。
その「孤独のグルメ」の海外出張編として、2016年に俳優の松重豊さん主演で「孤独のグルメ お正月スペシャル〜真冬の北海道・旭川出張編」が放送されました(※ブラジルを舞台にした特別編は、確認した限りでは「孤独のグルメ」シリーズではなく、松重豊さんが出演された別の紀行番組「松重豊の人情紀行『地の果てからこんにちは』~ヨーロッパの秘境と、日本の移民~」(2017年放送)などでブラジルが取り上げられたようです)。これらの番組で紹介された場所の一つが、サンパウロにある活気あふれる「中央市場(Mercado Municipal de São Paulo、通称メルカドン Mercado Municipal Paulistano)」です。ここは、サンパウロを訪れたならぜひ立ち寄りたい、食の魅力が詰まったおすすめ観光スポットです。
HP Mercado Municipal Paulistano(ポルトガル語)
住所 Rua da Cantareira, 306 – Centro Histórico de São Paulo, São Paulo – SP
アクセス 地下鉄 São Bento(サン・ベント)駅 または Luz(ルス)駅 から徒歩約5~10分
※注意:市場周辺のセントロ地区は、日中でも人通りが少ない場所や時間帯は治安に注意が必要です。貴重品の管理を徹底し、周囲の状況に気を配りながら移動しましょう。特に夕方以降の訪問は避けるのが賢明です。
90年以上の歴史を誇る美しい市場建築と活気あふれる店内
サンパウロ中央市場(メルカドン)は、サンパウロ市の歴史的中心部(セントロ)に位置する、市民と観光客で賑わう公設市場です。
この建物自体も一見の価値があります。著名な建築家フランシスコ・デ・パウラ・ハモス・デ・アゼヴェードの事務所によって設計され、1933年に開場しました。特に目を引くのは、ドイツ人アーティスト、コンラード・ソルゲニヒト・フィーリョによって制作された美しいステンドグラスです。彼は、セー広場にあるサンパウロ大聖堂(Catedral da Sé)をはじめ、ブラジル国内で300以上の教会のステンドグラスを手掛けたことで知られています。

サンパウロ大聖堂(Catedral Metropolitana de São Paulo)も市場から徒歩圏内
市場の内部、特に1階は、まさに食の宝庫。色とりどりの新鮮な野菜や果物、精肉、鮮魚、チーズ、ハム、香辛料、お菓子、ナッツ、オリーブオイル、ワインやカシャッサ(サトウキビの蒸留酒)など、ありとあらゆる食材を扱うお店が所狭しと並び、活気に満ちています。
特に果物売り場は圧巻です。日本では見かけないような珍しい南国のフルーツもたくさん並んでいます。店員さんに声をかけると(あるいは見ているだけでも)、気前よく試食させてくれることが多いので、ぜひ色々な味を試してみてください。
そして、2階は広々としたレストラン・フードコートエリアになっています。市場の喧騒を眺めながら、名物料理やブラジル料理、軽食、ビールなどを楽しむことができます。こちらも歴史のある人気店が多く、ランチタイムは大変賑わいます。
五郎さんも唸る!?市場名物「モルタデッラ・サンドイッチ」と「パステル・ジ・バカリャウ」
サンパウロ中央市場を訪れたら絶対に試したいのが、市場の名物グルメです。松重さんも番組で堪能されていたかもしれませんね。
山盛りの衝撃!サンドイッチ・ジ・モルタデッラ (Sanduíche de Mortadella)
市場の代名詞ともいえるのが、この「モルタデッラ・サンドイッチ」。モルタデッラとは、イタリアのボローニャ地方発祥の、ピスタチオなどが入った大きなソーセージ(ハム)のことです。
このサンドイッチは、これでもか!というほど大量の薄切りモルタデッラ(店によっては軽く焼かれている)を、フランスパン風のパン(Pão Francês)で挟んだ、見た目にもインパクト大な一品です。オプションでチーズ(Queijo プラットチーズなど)をトッピングすることもできます。
写真では伝わりにくいですが、ものすごいボリュームです。ハムの量が尋常ではなく、一般的な日本人なら一人で食べきるのはかなり困難。味付けはシンプルにハムの塩気がメインですが、その塩気もかなり強めです。複数人でシェアして食べるのがおすすめです。市場の2階にある「Bar do Mané」や「Hocca Bar」などが有名店です。
サクサク熱々!パステル・ジ・バカリャウ (Pastel de Bacalhau)
もう一つの市場名物が「パステル」です。パステルは、小麦粉で作った薄い生地で様々な具材を包んで揚げた、ブラジル風の揚げパイ(揚げ餃子のようなもの)。市場では特に「パステル・ジ・バカリャウ」が人気です。
バカリャウとは塩漬けの干し鱈(タラ)のことで、ポルトガル料理やブラジル料理でよく使われる食材です。このバカリャウをほぐしたものと、ジャガイモや玉ねぎなどを混ぜたフィリングが、パステル生地の中にたっぷり詰まっています。揚げたては外側の生地がパリッと香ばしく、中のバカリャウの塩気と旨味が絶妙! こちらもボリューム満点ですが、モルタデッラ・サンドイッチよりは食べやすいかもしれません。ビールとの相性も抜群です。
こちらも2階のレストランエリアで食べることができます。「Hocca Bar」などがパステルでも有名です。
まとめ:五感を刺激するサンパウロの胃袋へ!
サンパウロ中央市場(メルカドン)は、ただ食材を買う場所ではなく、歴史ある美しい建築、活気あふれる雰囲気、そして美味しい名物グルメを一度に楽しめる、まさに五感を刺激するスポットです。
色鮮やかなフルーツの試食を楽しんだり、名物の巨大サンドイッチや熱々パステルに挑戦したり…。まるで「孤独のグルメ」の五郎さんのように、市場のエネルギーを感じながら食の探求をしてみてはいかがでしょうか? サンパウロ観光の際には、ぜひプランに加えてみてください!