ジャパンハウス(JAPAN HOUSE)3つの問題。外務省による政治広報か文化発信か。 | Brasil Tips(ブラジルチップス)

ジャパンハウス(JAPAN HOUSE)3つの問題。外務省による政治広報か文化発信か。

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みなさん、ジャパンハウス(JAPNA HOUSE)ってご存じですか。

2014年から外務省を中心に動いている政府広報のプロジェクトでして、『「世界を豊かにする日本」の発信拠点』を標榜しているいわゆるハコモノです。

日本文化の発信というといつぞやのアニメの殿堂を思い出しますが、こちらは日本国内に設置するのではなく、ロサンゼルス・ロンドン・サンパウロの3つの都市で日本の文化を戦略的に広めていこうというもの。東京オリンピックのメイン会場も手掛ける隈研吾氏らが設計するというわけでして、かなり力が入っています。

ここブラジル・サンパウロにおけるオープンも5月6日(一般公開)に決定しまして、在ブラジルの日本人の中では頻繁に話題に上がっています。日本祭りでも専用ブースが作られていました。

と、ここまでが超簡単な概要というか、結論を言えばそれだけの話なのですが、これまでの資料をさらっと読んでみると「政府の戦略的広報」という芳しい匂いに相応しい迷走っぷりを感じずにはいられず、ちょっと筆をとってみました。

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ジャパンハウスとは

これからちょっとした観光施設にもなると思うので、もう少し丁寧に説明しておきます。

2014年に策定されたいわゆる骨太の方針の中で、「真に日本の『正しい姿』や多様な魅力の発信に向けて,海外 の広報文化拠点の創設を検討」することになり、そろそろオープンするかなという状況です。

外務省の説明によれば以下のような施設を目指すらしいです。

外務省は,平成27年度予算の成立を条件に,ロンドン,ロサンゼルス,サンパウロにおける「オールジャパン」の発信拠点であるジャパン・ハウス(仮称,以下略)の設置を検討しております。

ジャパン・ハウスは,日本に関する様々な情報がまとめて入手できるワンストップ・サービスを提供すると共に,カフェ・レストラン,アンテナショップ等を設置し,民間の活力,地方の魅力なども積極的に活用したオールジャパンでの発信を実現し,専門家の知見を活用しつつ,現地の人々が「知りたい日本」を発信することをコンセプトとした新たな発信拠点です。

このようにオープンな施設にすることによって,従来日本への関心が必ずしも高くなかった人々を含めた幅広い層に対し,日本の「正しい姿」や多様な魅力を発信しながら,親日派・知日派の裾野を拡大していくことを目的としています。

この説明を読む限り「日本国版アンテナショップ」というところでしょうか。とはいえ、行政が直接運営するのではなく、民間に運営を委託するようでして、サンパウロであれば電通がその業務を請け負います。

japanhouse

日本=クールというのは2周くらい回ってまだまだ海外で強いイメージがありまして、日本人だと言って悪いイメージを持たれることはあまりないと思っています。ブラジルは特に親日家が多いのだと思いますが、東京出身だというとみんな大喜びするものです。

そういう意味でジャパンハウスのような拠点自体は需要があると思いますし、まだまだ深い日本という国を知ってもらうためには面白いプロジェクトだと思います。

対韓国・中国を意識した政治的な思惑がベースにある

一方で、今の世の中このような単なる親睦施設を作ることが許されるわけもなく、政府が実際に打ち出している目的は、韓国、中国との間でくすぶっている歴史・領土認識について日本の「正しい」認識を国際社会に発信することとなっています。

こうした手法の是非は色々とあると思いますが、実際に韓国や中国は自国の主張を常に海外に対してアピールしており、日本が出遅れているというのは事実のように思います。だからといって、品のない自国アピール・他国批判合戦に参戦するのも日本人好みではないわけで、その末にジャパンハウスのようなプロジェクトが立ち上がったのではないかと推察します。

ジャパンハウス完成前から発生している3つの問題

海外にいると日本という国のプレゼンスはまだまだあるなと感じながらも、どんどん虚像化しているとも思っていて(サムスンやLGを日本企業だと思っている外国人は相応数いる)、こうしたプロジェクト概念自体は一つのあるべき姿かなと思っています。

ただ、このプロジェクトの場合、半端じゃない迷走感があります。資料ベースで見ていくだけでも「本当にこれで大丈夫なのか」と思ってしまうことが多々ありまして、読めば読むほどこれ何なんだろうと思ってしまうのです。

単年度で増額予算500億円もつけたプロジェクトにしては「う~ん」となります。

1.アニメに惹かれて来た来場者に領土問題を紹介する無意味さ

外務省の説明を読むと、①民間の「活力」,②日本ブランド(伝統と革新,各分野の最先端技術),③地方の魅力の3つで顧客を囲い込み、来場したそれらのターゲットに対して④我が国の政策・国際貢献をアピールすると書かれています。

このたった数行にツッコミどころが満載でして、企業を指しているであろう「民間の活力」って何なんだとか、②と③の内容は多分に被っているんじゃないかとか。

でも最もこの文章の無意味さは①~③を目的に来た人々にどのようにして④を落とし込むのかということでしょう。

もちろん1万人いれば数人日本の領土問題に興味を持つ人もいるでしょうけど、アニメを見に来たら竹島の領土問題なんてサラッとしか見ないでしょうし、数日後には全て記憶から消えていることでしょう。

ちなみに外務省そのものが以下のように考えているようで先行きが不安です。

外務省が慎重なのは、韓国が海外に設置した施設の展示で竹島問題を集中的に取り上げたところ来場者が途絶えた例もあるためとしている。外務省幹部は「日本の魅力を伝えることで本当の日本ファンを増やしたい」と強調している。(産経新聞2016.3.25

そこまで分かっていてもこの路線にチャレンジするんですね。逆に相応の戦略が必要だと思うんですけど、それはどこにも明記されていない。

アニメから領土問題の理解に誘導するのって、夜ご飯の材料を買いに来た主婦にベンツを購入させるくらいに難しいと思うのですが、ここに関する論拠がないままに「日本好きなら日本のことに興味ある」というおそらく当人達も無理だろうと分かっているコンセプトは早めに修正するべきじゃないかと思います。

2.何でもあるは何もないと同じ

これも難しい問題だと思うのですが、現代において「なんでもあります」というのは客にとって何もありませんというのと同じことになるリスクがあります。

日本でも最近流行しているレストランでもショップでもみんな何かしらの特徴を打ち出しているところばかりです。味噌でも醤油でも一通り揃っているラーメン屋というのは便利なのですが、近所にあれば行くけどわざわざ行くようなところではありません。

何故ここまで思うかというと、先日のYoutuber記事日本祭りの記事でも紹介したとおり、既に性別や年齢などに応じて日本文化への興味が細分化していて、この傾向はさらに進むのではないかと思っているからです。

着物・和食・家電製品といったざっくりとした日本文化を薄く広くいれても興味を持ってお金を落とす顧客は少なくなるのではないかと思うのです。ロンドン、ロサンゼルス、さらに世界で最も日系人の多いサンパウロはなおさらです。

そんな中でとりあえず日本文化オールパックに魅力を感じて来てくれるのか。もっとも政治問題を伝えるための釣り餌ということであればいいのでしょうけど、上述の通りそれも難しいのではないかと思います。文化を中心にするならもう少し細分化してターゲット別にエリアを分けたり、訴求を分けるなどしないとコンテンツによる訴求って結構難しいのではないかなぁと思います。

3.成果指標があまりにも不明確

ここまででターゲットも不明瞭で、結局何をしたいのと思うのですが、それが如実に出ているのが「成果指標」です。

有識者諮問会議で以下の発言が記録されています。

「入ればそこは日本」というジャパン・ハウスの戦略実施に際しては,来館者数や稼働率といった単純な指標にするのではなく,日本が現地や国際社会にとって役に立っているかをしっかり検証すべきとの意見があった。

ここまで来ると本来の目的が不明(日本が抱える領土問題などにおける主張がスタート地点だたような)ですが、日本の政治的な見解に対する理解を広めるという本丸を目指すのであれば、そうした指標があって然るべきだと思います。ところが会議における意見は「日本がいかに役に立っているか」を評価しようというもの。

有識者のこの「それっぽい」意見も納得で、”政治発信、文化発信という複数の目的”と”文化センターやらコンベンションセンターやら日本文化すべて入れましたという施設”で、何を指標にすればいいのか僕も分かりません。

まとめると「日本が世界の役に立っているか」になるわけです。なるほど。

しかしこのオンラインが発達した世界で、たった3つの箱で世界が日本に役立っていることを理解させようと考えるとは、恐ろしい会議です。

マスコミからは「効果に疑問」

後日こんな記事を見つけました。ブラジル日系社会からあまり好意的でないという意見がありますが、これは現地でもよく聞かれた話で、やはり政府と現地日系社会は足並みが揃っていないのが現状にようです。

毎日新聞 ジャパンハウス 日本政府広報拠点開館 「発信」効果に疑問も ブラジル

結局どの目的をするにしても中途半端

結局目的が最初と現在でズレていて、誰もよく分からないから指標もつくれないし、コンテンツもはっきりしないように感じます。民間に投げっぱなしになる予感しかしません。

政治発信するのであれば現地のテレビとかにコメンテーター出した方がずっと効率的です。オンライン上で日本のニュースをポル語や英語で毎日更新するとか。文化発信するのであればどういう層をターゲットにして文化を選択するのかをもっと考えるべきでしょう。

気持ちは政治発信、行動は文化発信と頭と体がバラバラのままに進んでいけば、この500億円、そして今後さらに増え続ける費用について国民の理解を得るのは難しいのではないでしょうか。

外務省の資料がネット上に上がっているので以下に共有します。感覚的にはやる気あるのだろうかというレベルです。ジャパンハウス① / ジャパンハウス②

参照 外務省:「ジャパン・ハウス(仮称)」の創設・運営業務 / JAPAN HOUSE

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