ブラジルでは昼間点灯が義務化。日本で法制化が進まない理由

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ブラジルで生活をしていて気付く日本との違いに「自動車のヘッドライト」のあり方があります。こちらの高速道路では、夜間のみならず、昼間でも多くの自動車がヘッドライトを点灯させています。

日本でも夕方など少し暗くなると車幅灯を点灯させることがあったり、霧などで見通しが悪いと昼間でもライトを点灯させますが、通常はほとんど利用しないでしょう。

今年テメル大統領(当時は大統領代行)が裁可したことで、高速道路においては昼間でも「ヘッドライトの点灯」が義務化され、違反すれば約85レアル(約2700円)の違反金が発生するのです。

ニッケイ新聞
ご迷惑をおかけしますが、後日アクセスしてください。

さて、このような法律はブラジルのみならず、欧米でも一般的な法律なのですが、一方で日本では”昼間点灯”はまだ法制化されておらず、それどころか、しない方がいいという風潮のようです。

  

クルマの昼間点灯とは

クルマの昼間点灯とは、文字通り

昼間の明るいうちから車両の前照灯等を点灯させること

とのこと。

目的は、ロービームの点灯などによって、他の車両や通行人に対して自分の車両の存在を知らしめるというものです。点灯していない時に比べると、点灯によって気づきやすいという理屈で、ヨーロッパ、アメリカなどを中心に義務化されており、また当該国で販売されている車は常に一部のライトが点灯するような仕組みになっているようです。

昼間点灯は実際に効果があるのか

さて、この昼間点灯の効果ですが、以下のような効果があります。

  • 車の存在が確認しやすくなる
  • 車の存在に気づきやすくなる
  • 遠方の車両が近くに感じやすくなる
  • 認識可能な距離や角度が向上する

特に車両同士の追突事故については、昼間点灯の効果が大きいとされているようで、このような施策には一定の評価、そしてそれに基づいた法制度があるといったところのようです。

確かに”ない”よりは”ある”方が、歩行者にとっては気づきやすいと思いますし、また曇天など天候によってはその効果はさらに大きくなるでしょう。これをドライバーの気遣いに任せるとどうしても効果にムラが出るわけでして、いっそのこと常にライトを点灯させてしまおうというのが法律の趣旨です。

しかしながら、この昼間点灯は日本では法制度化はまだされておらず、さらには法制化そのものに対しても消極的のようです。

参考 早稲田大学石田研究室

日本で昼間点灯が義務化されていない理由

いくつかの資料をまとめてみると、中間点灯が日本では消極的な理由は大きく2つあります。

緯度の問題

一つ目は緯度の問題です。

既に昼間点灯の法制化が進んでいる国の多くは、緯度の高い国がほとんどです。緯度が高いということは、そうでない国に比べると、太陽が最も高い位置に来たと時でさえも、相対的に非常に低い位置にとどまります。

headlight-car

画像:JAF

上記の図にある通り、太陽の位置が低いということは、同じ物体に対してより長い影をつくり出すことを意味します。上記は人間ですが、これが雲であったりすれば、一つの雲はその下だけでなく、さらに広い範囲に影を生み出すこととなり、常に暗くなる傾向にあります。

そのため、例え昼間であったとしても、ライトの効果は高くなるわけですが、一方で日本ではそこまで日が出ない状況は少なく、ライトの常灯はそこまで効果がないというのが、法制度化されていない理由なのです。

バイクが目立ちにくくなる

昼間点灯は、効果が薄いのみならず、ライトの点灯による弊害も指摘されており、これが法制化が進まない2つ目の理由です。

実はクルマにおいては昼間点灯に関する取り決めはないものの、バイクについては1998年から常時点灯が義務付けられています。(直近製造のバイクにはそもそも消灯機能が付いていません。)

当然ながらバイクは車に比べて、体積が小さく、目立ちにくいために、常時点灯によりその存在を目立たせることがこの法制度の目的でした。

これを踏まえてクルマの昼間点灯について考えると、せっかくバイクを目立たせるために「バイクの常時点灯」を義務付けたにも関わらず、クルマまで「昼間点灯(=常時点灯)」されてしまっては、バイクを目立たせる本来の意義が失われてしまうと考えられています。

香川県の説明でも以下のように説明されています。

一方、日本では、交通事故防止のため、平成10年以降に製造された二輪車について、前照灯の常時点灯が義務付けられており、エンジン始動とともにライトが点灯し、消灯スイッチの無い構造となっています。
しかし、四輪車については、全車両が晴天時にライトを点灯した場合、常時点灯が義務付けられている二輪車が見えづらくなってしまうなどの問題点が指摘されています。

バイクを優先的に守るために、クルマの昼間点灯は義務化しない方がいいというのが法制度化に消極的な理由となっているわけです。

国は推奨しないけど、自治体や事業者レベルでは進めるデイライト運動

このように一定の合理性があるように見える日本における非法制度化の流れですが、実務上はちょっとした矛盾を抱えています。

というのも、自治体や事業者レベルでは、デイライト運動と銘打って、積極的に昼間点灯による事故防止を進めようとしている現状があるのです。

トラック配送を担う流通各社や各バス会社など民間企業でも、一定の期間、自社の車両に昼間点灯を義務付けて、交通事故防止の啓発活動を進めるところは少なくなく、また自治体レベルでも同様のキャンペーンを行っている事例は少なくありません。

『平成28年 春の全国交通安全運動』が実施されます!(射水市)

タクシーの日 – 社団法人 全国ハイヤー・タクシー連合会

特に自治体においては、その主体は道交法を取り締まる都道府県警であったりしまして、少し奇妙な動きに感じられます。国が考える「効果も薄く、バイクの常時点灯効果を抑制する」という理屈は一定の合理性があるものの、それでもなおミクロレベルではデイライト運動が進んでいる日本の現状は不思議なものがあります。

ちなみに、ブラジルは南緯1度から30度程度の国でして、日本の北緯35度に比べると緯度は低いわけでして、これはブラジルで交通ルールの遵守意識が低いということを差し引いても、そこに法制度化に至る十分な理由を日本の方々は推察してみてもいいのではないかと思います。

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