誰でも優先席を譲る。ブラジルの優先席に学ぶ戦略的配置

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ブラジル人のイメージってどんなものでしょうか。

明確なブラジル人像を持っている人々は多くないかと思いますが、実際にブラジルに来て多くの人が感じるのはブラジル人の優しさとおせっかいなほどの親切さ。

僕自身も多くのブラジル人の優しさに支えられてここで生活をしていて、日本のようにシステムが完成しているがゆえに、一人ひとりが孤立化している状況に比べると、ここは不完全なシステムだけど人と人のつながりで物事が解決していくといった状況だと感じています。

さて、そんなブラジルの人と人の触れ合いを中心とした世界観を表しているのかもと最近思っているのが優先席の存在です。

もちろん日本にも優先席は完備されていて、その意味自体は同じなのですが、サンパウロの地下鉄やバスにおけるそれは少し日本の優先席とは異なるところがあります。

  

どの位置から乗り込んでも、そこには優先席が、たくさんある

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tarin-picまず最初の相違点。それは優先席が1箇所にまとめられておらず、車両全体にバラバラに設置されているということです。

日本では優先席は車両の隅に優先席がまとめて設置されているのが一般的ですが、こちらでは1つだけの優先席が各ドアの近くに設置されているのです。

これには2つのポイントがあると思います。

1つは、優先席に座る必要のある人々がわざわざ優先席まで移動する必要がないということ。そもそも高齢者や妊婦は困っている人々であり、その人達が一般の人々に遠慮する必要はないわけです。どこから乗っても座ることができるというのは至極当然のことがここでは可能です。

2つ目は、明確な優先席以外の席も事実上の優先席として人々が扱うようになるという点です。高齢者は複数人で乗車することが多く、そのうちの一人に席を譲れば周りの他の人々も席を譲る雰囲気が自然とでてきます。こうした仕組みにより、総数で見ると優先席の数は少ないかもしれませんが、事実上の優先席は増えるのです。

バスに設置されている高齢者や生活困窮者のための席

電車の優先席以外にバスにも優先席があります。ただバスの場合は優先席よりも、料金支払所より前方のスペースに注目する必要があります。

ブラジルの市バスは通常バスの中間くらいのところに料金支払い所があります。そしてこの料金支払い所の手前にも座席が設置されています。

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バスの中間に位置する支払い所。前方乗口からこの支払所までは無料で乗る人々が座っている。

このエリアは高齢者や生活困窮者のために用意された座席であり、乗車しても料金を支払う必要がないと聞きました。

すべてが乗客の良心に任されているため、そんなことやったら誰も料金を支払わないのではないかと思うかもしれませんが、そんなことはありません。ほとんどがきちんと料金を支払っており、たまに前方に座る人々は確かに持ち物や服装も十分とは言えないように見受けられます。

もちろん本当はお金が支払えるかもしれませんが、でもそうした少数の悪意を持った人間よりも、本当に生活に困っている人々のバス利用に目を向けた結果がこの仕組みが維持されている理由なのではないでしょうか。

普通の人が中心の日本、困っている人が中心のブラジル

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日本の典型的な優先席。端っこにまとめられて設置されている。

僕はこうしたブラジルの優先席の考え方が気に入っています。

それは「困っている人がいる」ということが大前提にあり、それを特別にしていないからです。もちろん待遇は特別なのですが、それが特別なことではないという気持ちよさがあります。

困っていたら助けるのは当たり前。そういう人がいるって分かっているんだから事前に仕組みをつくるのは当たり前。そんな声が聞こえてくる気がするのです。

一方で日本はちょっと順番が異なります。席はみんなのものであり、その中で特別扱いを受けるのだから端っこに配置する(女性専用車両も同じかも)。それどころか、優先席は飽くまで好意によって譲るものであったりすると考えている人々も多いように思います。もちろん誰も居ない時にすわるのは全く問題ないと個人的に思っています。

もちろんこうした考え方で設計されたのかは不明です。ただ僕はこのブラジルの優先席の物理的な配置からそういうことが読み取れるように思うのです。そしてそんなブラジル人を妄想するとブラジルがさらに楽しくなります。

でも、この妄想を支えるに足るブラジル人の親切をここで何度も見て感じて経験していて、たぶんこれが人としてあるべき姿なのだろうと思っています。

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