進出企業が悩むブラジルの労務コスト。人件費が高くなる8つの理由

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ブラジルにおけるビジネスを困難にしている理由の一つが労働問題。

ブラジルでは労働者の保護政策が厚く、これが企業にとっては事業運営を難しくさせていると言われています。特にグローバル企業にとっては、他国に比べて人件費の割合や労務手続きの負担が重いことで、外資投資が遠のく一因となっています。

これからブラジルでビジネスをしようと考えている企業の方、駐在予定の方、またブラジルで働きたいと考えている方は、ブラジルの特殊な雇用規制などについて予め知識を持っておくとショックが少ないでしょう。

基本的なことからブラジル労働者が羨ましく感じるものまで、ブラジイル労務ルールから主なルールを7つをご紹介しましょう。

※ブラジル関連のビジネスをされる方はこちらの本がオススメです。

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ブラジルの雇用・労務。基本的な8つのルール

1.ブラジルにおける法定労働時間

ブラジルの法定労働時間は1週間あたり44時間です。

ブラジル人を想像した時に南国の太陽の下穏やかに働いているイメージが多少あるかもしれませんが、日本が40時間であることと比べると決して短いわけではありません。

しかしながら、日本に比べると規定の労働時間に対する意識が強く、就業時間になれば今日の仕事は終わり!といったところが一般的です。本当に終業時間ぴったりに帰ることも普通です。

日本のようにサービス残業やちょっと残って仕事やってよといった感覚は通常ブラジル人にはないと思った方がいいでしょう。無論ハイクラスの一部の職種に限っては例外もありつつも、家に帰って家族とゆっくりと過ごすというのが一般的なブラジル人の習慣です。

2.交通費とランチ

交通費ついては法律によって規定されています。

1987年以降ブラジルでは自宅と職場の交通費を企業が支払うことが義務付けられています。ここは日本と大きな差はないですね。

加えて週44時間の労働をしている労働者はランチ代を企業が支給してくれることが一般的です。企業が立地するエリア近辺のレストランが提供するランチ代に相当する金額を賃金とは別に支給します。工場などの場合は社食が用意されている場合もあります。

Plato Feitoと呼ばれる定食(肉、サラダ、米、豆のスープ、ポテトフライ)で15レアルから20レアル、ポルキロで20レアル超という水準ですから、22日間のランチ代は600レアル程度になりますでしょうか。

3.産休

ブラジルでも産休は法律によって保護されている権利です。

女性労働者は4ヶ月の産休を享受することができます。この間は通常の給与水準が社会保険から支払われます。

加えて、2010年に新たに法制化された Programa Empresa Cidadã プログラムを利用すれば、企業は概要する労働者にさらに1ヶ月の産休を与えることができます。この費用は企業が負担することになりますが、事前に行政登録をしておけば費用は100%税額控除の対象となります。

また男性についても出産後5日間の産休が認められており、有給となります。

4.ボーナス‐13ヶ月目の給与

ブラジルではクリスマスボーナスという日本における冬季ボーナスに当たる仕組みがあります。月額と同様と金額が支給金額であり、11月と12月の2回に分けて支給されます。

日本と異なるのは、これが企業の裁量ではなく、法律に規定されている内容であるということです。1962年に João Goulart 政権が法制化したもので、クリスマスシーズンの消費喚起とそれに付随した税収の増加を狙って作られました。

日本であれば今年は業績が悪いから寸志で我慢してくれということもありますが、ブラジルでは業績に関わらずこのボーナス支払い義務があり、事業者にとっては中々に負担の重い支出です。

ちなみに、12ヶ月の労働実績がない場合は、実際に働いた月数分のみが支給額となります。入社後6ヶ月であれば月額の50%が支給額となります。

5.有給休暇

日本では有給休暇が権利として付与されていながらも実際には取得が難しいものです。

一転してブラジルでは12ヶ月間の勤務の後に30日間の有給付与が義務化されており、ブラジル人はこれを喜んで消費します。まぁ日本がオカシイだけでその姿勢は全く問題ないわけですが。

しかしながら30日間も有給があると企業にとっては非常に重い負担ではあります。実額給与は13ヶ月分、労働日数は11ヶ月分ですから。工場などシフト制の職場では、こうした制度を前提に余剰人員を抱えなければ有給取得の際に工場が回らなくなるといったことも聞きます。

6.慣習による労働者への福利厚生

ブラジルでは最低賃金レベルで働くことは決して珍しくありません。2016年現在ブラジルの最低賃金は月880レアル(約25,000円)です。街なかのウェイターなどは月に1,000レアル(約32,000円)くらいの給与水準だったりします。また大卒の新卒給与で1,500レアルくらい。

ブラジルは決して物価が安いわけではなく、共働きや実家暮らしであってもこの賃金レベルで生活することは難しい傾向にあります。しかしそれでも人々がこのような給与水準を受け入れているのは会社が様々な形で福利厚生を与えることが一般的であるためです。

例えばCesta básica de alimentosと呼ばれる食材提供は一般的です。元々は米や豆、パスタやコーヒーといった基本的な食材が一式揃った箱を給与とは別に従業員に渡す仕組みでした。

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現物給与みたいなものですね。流石に時代の変遷もあり、今では同等の金額を給与に加えるところが増えているようです。

また小さな子どもを抱える親に対して、昼間の託児所費用の一部を補助することもあります。コールセンターのように女性が多い企業では一般的で、共働きが珍しくないブラジルではこうした制度に対する意識は日本に比べると高いように思います。

その他にも学生を多く雇っている企業では奨学金制度がある場合や健康保険以外に生命保険への補助があることも決して珍しくありません。

企業は労働者を雇う場合に賃金以外にこうしたコストについても十分に考慮しなければいけません。

7.勤続年数は日本に比べてずっと短い

長らく終身雇用が当たり前だった日本でも、ベンチャー企業を筆頭に数年ごとに転職することは珍しくなってきましたが、ブラジルはその比ではありません。

ハイクラスなブラジル人が言うには、10年も同じ企業で働いたらそれは驚きに値するとのこと。またある日系企業の方から聞いた話では、現場レベルの社員であれば100人入った翌年70人がいなくなっているとのこと。少しでも給与が高い職場があればそこへすぐに移ってしまうそうです。

下記のように日本では約半数が10年以上勤務していることに比べるといかにブラジルにおける雇用の流動性が高いか分かると思います。

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厚労省「労働白書2013年より」

8.アルバイトという仕組みはない。全員が正社員

そんなに人件費がかかるのであれば、アルバイトを使えばいいではないかと思うかもしれませんが、ブラジルにはアルバイトという雇用慣習はありません。学生を雇う場合であっても雇用形態は正社員になります。

ブラジルの大学生と話をしていると朝に大学へ行って、その後職場にでかけて8時間近く働くという人も珍しくありません。

つまり学生であっても、上記のような福利厚生のうちいくつかを享受することが可能であり、また企業からすれば季節変動などへの対応が難しく、常に余剰人員を抱える必要があります。

そして人件費は2倍にまで跳ね上がる

日本でも最近では女性の社会進出に伴って社内に保育施設を設けたり、リクルートのように週休3日制を目指すような動きもありますが、これは飽くまで付加的な従業員へのサービスです。

日本において一般的に企業が最低限負担しなけらばならない法定福利費は給与の18%程度です。

一方でブラジルでしばしば聞くフレーズは「雇用にかかる費用は給与の2倍」というものです。10万円が従業員への給与だとすれば、上記のような様々な福利厚生によって企業の負担は20万円となります。これは諸費用を含めたものですが、それでも最低で68%の法定福利費が必要と言われています。

さらには物価の上昇に合わせて毎年10%程度のベースアップが求められることを加えて考慮した時、ブラジルという国においてビジネスをすることがいかに難しいか想像に難くありません。

とはいえ、物価に対して一般の給与水準が低すぎると考えると、一般社員には必要な手当であり、どちらかというとその利益を過剰に享受しているのは高給社員じゃないかと個人的には思いますが。

参考 The Brazil Buisiness

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