ブラジルの代表的な税金16選。世界一複雑な税制は物価が高くなる原因に。

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ブラジルに来て多くの人が驚くのが物価の高さ。

この理由をブラジル人に聞けばほとんどの答えが「税金」と言います。それもそのはずで、ブラジルには商流のあらゆる過程で様々な税金が課されており、その積み重ねにより原価の数倍の小売価格になるということも珍しくありません。

こうした税制度は当の当局担当者でも自分の担当範囲しか知らないことが珍しくないほど、複雑に入り組んでおり、コンサル会社pwcが世界銀行らと共に189カ国を対象に行った調査によれば「世界一時間がかかる税務制度」という結論が出るほどです。

ブラジルはその他にも労務や税関システムなども企業にとって取り扱いにくく、総称して”ブラジル・コスト”と呼ばれています。

そんな複雑怪奇なブラジル税システム。代表的な16の税金をご紹介しましょう。

  

1. CIDE(海外送金に係る税金)

社会負担金。CIDEはContribuição e Intervenção no Domínio Econômicoの略。

ブラジル企業が海外企業との間に結んだロイヤリティ契約や技術移転契約、技術提供に係る補填などが対象となります。

こうした契約に基づき送金が行われる場合にCIDEが課税され、税率は10%。源泉税も別途発生。

ちなみにCIDEという名称はCIDE-Fuelという石油に係る税金や国際電話に係る税に使用されることもあります。

2. COFINS(社会保障融資負担)

社会負担金。Contribuição Social para o Financiamento da Seguridade Socialの略です。

医療や社会福祉など社会保障に係る財源のための税金です。現在ブラジル政府の歳入のうち2番目に大きなものです。

海外からブラジルへの商品・サービス輸入に対して課税されます。算定基準は毎月のインボイス総額になりますが、事業者がどの税制度に基いて申告しているかによって税率が0%~7.6%と異なります。

3. CSLL(法人利益に対する社会負担金)

社会負担金。CSLLはContribuição Social sobre o Lucro Líquido das Pessoas Jurídicasの略です。

財源は社会保険に充当されます。

国内に拠点を構える全ての法人が対象となり、税引前純利益に対して9%~15%の税負担が課税されます。

4. II(輸入税)

連邦税。Imposto sobre a Importaçãoの略です。

外国製品の輸入に対して課税される輸入税です。輸入事業者が負担する税金ですが、ケースによっては輸出側が負担することもあるようです。

商品によって税率は異なり、輸入事業者の支払価格や輸出事業者が作成した荷札価格等に対して0%~20%が課されます。

なお、メルコスール(南米南部共同市場)内の商品移動については無税。(もちろん第三国への商品移動を含む場合は課税対象となります。

5. IE(輸出税)

連邦税。Imposto sobre a Exportaçãoの略。

国内製品を海外に輸出する際の輸出税に相当します。国際市場での推定販売価格(自由競争時の価格)に基づき、課税されます。

対象品目の税率は基本的には30%。ただし、国内において当該製品が供給不足に陥った時に輸出を抑制するための税金で、対象品目・税率は流動的に決定(増税・減税)することが可能で、上限は150%。

6. IOF(金融取引税)

連邦税。金融活動に係る税金で、金融機関や保険会社による貸付、外国為替取引、各種信用取引等が課税対象となります。

税率は単純な資本金送金、生命保険や傷害保険に係る送金、輸入取引に係る送金であれば0.38%、医療保険で2.38%、その他保険で7.38%。3

定期預金や投資信託による運用については、運用期間が30日以内の場合は最大96%から徐々に税率が減少して最小で3%。運用期間が30日を超える場合には非課税となりますが、別途所得税の申告が必要となり、180日以内にクローズした取引の場合は運用益に対して22.5%の課税が発生します。

7. IPI(工業製品税)

連邦税。Imposto sobre Produtos Industrializadosの略。

国内外を問わず、また最終製品かどうかに関わらず、あらゆる工業製品に対して課税されます。

税率はNCMコードに準じます。最大で300%の関税がかかるものもあります。

8. IPTU(都市不動産所有税)

市税。Imposto sobre a Propriedade Predial e Territorial Urbanaの略。

都市部の不動産に対する税金で、時価に基づき算出される。

自治体と所有不動産規模により税率は異なるが、サンパウロを例にとると居住用建物で1%、非居住用建物で1.5%が基準となり、不動産価格に応じて割引、割増される。

9. ITR(農地所有税)

連邦税。Imposto Territorial Ruralの略。

日本語の文献では「農地所有税」という名称がついていますが、ITRはl郊外に所有する土地を対象とした税金です。もちろん土地所有者が支払います。

課税率は0.03%から20%。

10. ITBI(生存者間不動産譲渡税)

市税。Imposto sobre Transmissão Inter Vivos de Bens Imóveis e de Direitos a eles Relativosの略。

生存者間の不動産とその権利の譲渡が対象となる税。不動産の買い手が課税対象者。

税率は自治体により異なるが、一般的には2%~3%。ただし、住宅金融システムにより融資を受けている場合は、基準額までの取引については0.5%。

11. PIS(社会統合計画分担金)・PASEP(公務員厚生年金)

Contribuição para os Programas de Integração Social e de Formulação do Patrimônio do Servidor Públicoの略。

PISは民間企業の、PASEPは公務員・軍人の失業保険や金銭的援助に利用される。

こちらはNPO(非営利団体)や政府の外郭団体なども含めた全法人が対象となります。総利益に対して0.65%~1.65%が課税されます。

12. IRPF(個人所得税)

連邦税。Imposto de Renda de Pessoas Físicasの略。

ブラジル在住の住民すべてが対象となり、年間の個人収入に対して課税されます。ただし、最低賃金の2倍相当の収入以下については所得税の対象外となります。

最大は27.5%。

13. IRPJ(法人所得税)

連邦税。Imposto de Renda de Pessoa Jurídicaの略。

こちらは法人の所得税です。

事業目的、法人国籍に関わらず、ブラジル国内の公共法人・民間法人がすべて対象となります。

税率は15%から25%。

14. ICMS(商品流通サービス税)

州税。Imposto sobre Operações Relativas à Circulação de Mercadorias e Serviços de Transporte Interestadual e Intermunicipal e de Comunicaçõesの略。

付加価値税の一種で、州内取引、州間取引、さらに州によって税率が異なります。一般的な製品のみならず、通信や輸送サービスにも課税されます。

州内取引の場合、17%、18%、19%の3種類があり、州ごとに税率を選択。

  • 17%:以下の州を除くすべての州
  • 18%:サンパウロ州、ミナスジェライス州、パラナ州
  • 19%:リオデジャネイロ州

州間取引においては、原則として12%の課税が発生。一部州間取引については7%の課税となっています。

なお、外国への輸出取引の場合は課税対象外。また輸入品の州間取引については一律4%です。

15. ISS(サービス税)

市税。Imposto sobre Serviçosの略。

サービス役務提供に係る税金。支払いはサービス提供者側によって行われる。事業者の各月収入とサービス価格に準じて算定。

税率は事業者の居住自治体、サービス内容により大きく異なり、最大で5%だが、自治体によっては2%程度のこともある。

16. IPVA(自動車保有税)

州税。Imposto sobre a Propriedade de Veículos Automotoresの略。

自動車保有者に対する税。自動車、トラック、バイクなどが対象。

州や保有車種により税率は異なりますが、1.5%~4%が課税されます。

なお、サンパウロ州では低公害車普及に向けて、電気自動車およびハイブリッド自動車保有者については、IPVA収入の最大50%に当たる金額を還付する制度を2015年から開始しています。

複雑な税制度。ブラジルの最終負担税率は68.3%。

ブラジルは日本の約24倍の国土面積があり、1国といえども、州が一つの国レベルの広さになります。故に州間取引に課税したり、連邦、州、市がそれぞれに多様な税金を課しています。

冒頭に挙げたpwcの調査では、各国の企業による最終税負担率(主に利益に対する課税と対労働者に係る税)を算出しており、このような重なる課税の結果、ブラジルの税負担率は68.3%という結果になっています。ちなみに社会保障が比較的厚いと言われる日本でも49.7%。

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特に労働者に係る税負担率が非常に高く、人を一人雇うとその給与と同等の税支出が発生すると言われるくらいに企業にとっては大きな負担と聞きます。

さらに、現地ではそれぞれの税項目の算定基準が明確でなかったり、ルールが担当者によって異なっていたりするという声を上がります。

こうした税金一つ一つが企業に金銭的、事務的負担を強いており、また最終商品が高くなる一因となっていることは明白でしょう。

※ブラジル関連のビジネスをされる方はこちらの本がオススメです。

参考 THE BRAZIL BUSINESS / JETRO / ブラジル日本商工会議所 

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