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海外産日本酒が辿った2つの運命。”地理的表示”が阻む日本酒という呼称

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海外は今どこもかしこも日本酒ブーム。”Sake”という言葉そのまま日本酒を意味するほどに市民権を得ています。

ここブラジルでも日本酒は誰もが知るお酒の一つで、レストランに行けばあの有名なCaipirinha(カイピリーニャ)ならぬSakepirinha(サケピリーニャ)というメニューまであります。

スーパーでも日本酒をいくつか揃えているお店はしばしば見つけることができます。

やはり日本人としてはどんな銘柄があるのかなぁと気になりまして、先日スーパーに行ったところ、「これがグローバルなんだなぁ」と驚いたことがありました。

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リーズナブルな日本酒・純大地。ちょっとアルコール臭が強くて美味しいとは言えないかも

スーパーに並んでいたのは純大地と東麒麟という銘柄。

日本では聞き慣れない酒ですから、ぜっかくだから試してみようと思い立ち、安かった方の「純大地」を実際に買って試飲してみました。(約30レアル)

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パッケージは純和風。旧字体の漢字は正直読めません。

味はアルコール臭が少し強く、日本で飲む日本酒に比べるとクセが強いです。正直あまり飲むと悪酔いしそうな風味を感じます。

とはいえ、友人のブラジル人に聞けば「それ知ってる。結構好きよ、この味」とのこと。

いったい誰がこのお酒を作っているんだろうか、ブラジル産だから味がこんなもんなのかと見てみたラベルがこちら。

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ほうほう「Diagelo Brasil」なる会社が作っているのか。名前からして現地法人みたいな企業名だな。

酒蔵メーカーDiagelo。どこの会社なのかと調べてみたら。。。なんとイギリス!それも誰もが知っている以下のブランドを保有する超巨大飲料メーカーでした。

スミノフ、ジョニー・ウォーカー、ギネス、キルケニー、ベイリーズ、ピムス、J&B、キャプテン・モルガン、ホセ・クエルボ、タンカレー、ボーリューヴィニャード、スターリングヴィンヤーズワイン

正直日系移民が作った会社で苦労してブラジルで日本酒を作っているんだろうなぁくらいにしか思っていなかったんですが、まさかブラジルでイギリスの会社が日本酒を作っているとは思いもしませんでした。

今はイギリスのお酒。でも元々は日系移民が作った日本酒

さらに調べてみると、この純大地というブランドは元々サクラという日系移民が立ち上げた企業が1970年代に築きあげたお酒だということが農林水産省の以下の資料に記載されていました。

平成27年度 輸出戦略実行事業 コメ・コメ加工品部会(日本酒分科会)における調査報告書

サクラはブラジルでは超有名な調味料メーカー。普通のレストランでもサクラの醤油やみりんを頻繁に見かけます。

そのサクラが1979年から製造していたのがこの純大地。つまり、元々の推測はそう外れていなかったわけです。

その純大地をイギリスの酒蔵メーカーDiageoが買収(2010年)して、現在はブラジル産イギリス製日本酒となったわけです。

Diageoへのブランド移管について、農水省のレポートには「社名変更」とありますが、Sakuraは現在もそのままの名称で存在していること、Diageoは全く別企業であることから、買収されたものと推測されます。

ちなみに東麒麟も日系移民による日本酒。こちらは日本のキリン系列!

もう一つの日本酒「東麒麟」もまた日系移民によって作られたブランドで、その設立はなんと1934年。ブラジルでは既に80年の歴史があります。

製造している現地法人はその名も東麒麟(2016年7月1日付けで東山農産加工から社名変更)。

東山農産加工は三菱財閥の創業家岩崎家が創業した企業で、1970年台からキリンHDが経営に参画しており、現在9割以上の株をキリンHDが保有しています。

同じ日系移民によって始まった2つのブランドですが、一つは日本企業が、もう一つは英国企業が保有するようになったことは興味深いところです。

世界に広がる日本酒。でも、もう日本酒とは呼んではいけないらしい

このようにしてブラジルで生まれた2つの日本酒ですが、実は日本酒と呼んではいけないらしいのです。これはブラジルに限らず、海外で製造された清酒に日本酒やSakeという呼称を利用することを国税庁が禁止しています。

地理的表示「日本酒」の指定について(平成27年12月)

地理的表示とはなんぞやという方もいらっしゃると思いますが、国税超の資料から以下抜粋します。

地理的表示は、ある特定の産地に特徴的な原料や製法などによって作られた商品だけが、その産地名を独占的に名乗ることができる制度。 海外の地理的表示としては、ボルドーワインやスコッチウイスキーなどが有名。

これと同様に国産米を使って日本国内で製造されたものだけが日本酒という呼称を使えるというルールになったという話です。

海外で勝手に訳の分からない日本酒を作られて、日本酒ブランドが傷ついたら国益を損なうということですね。

これによりブラジルで作られている「東麒麟」「純大地」はともに日本酒とは呼べなくなるのです。

ブラジルで苦労しながら母国の味を再現しようと生まれたこの2つのお酒が長い時を経て、日本酒という名前を失うと考えると若干の郷愁を感じずにはいられないのは気のせいでしょうか。

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